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怒涛の南下とサービス精神にへこむ La Serena




清潔でコーヒー紅茶飲み放題のホテル。
すこし不満もあるけれど、居心地のよかったタルタル村を出ることにした。

もう行かなきゃもう行かなきゃと思いながらズルズルと先伸ばしにしていたが、やっと重い腰を上げたのだ。

荷物を整理し、苦労して狭い入口から自転車を外に出した。


村を出る途中で他のカップルサイクリストがゆっくり走っていたが、お互いスルー。
ガソリンスタンドの ATM でお金をおろしているうちにどこかに行ってしまった。



村の外は砂漠化した山がならび、しかしちらほらと家が建っているのが見える。
人が住めるように少しずつ開拓している最中なのだろう。
この調子で美しい海の町になったらいいと思う。



後ろから走ってきた車が停まった。
そこから出てきた男女3人組は、どこかで見た顔だった。

なんと、前に水と日焼け止めをくれた人たちだ。
前回と同じくハイテンションな彼ら。

「水はある? まだここなんてゆっくりだね!」

と数分間おしゃべりして、彼らは先へと旅立った。



久しぶりの進行になかなか苦戦していた。

足腰が辛い。
水を飲む配分の感覚がもうない。


上り坂をゆったり進んでいると、また車が停まる。

軽トラックのおじさんがこちらを心配してくれたようだ。
今はとりあえず Copiapo コピアポを目指していると言うと、

「もっと南まで行くからついでに乗っていけよ」

と言ってくれた。

チリに入ってから目に違和感があり、体が弱っていたので乗せてもらうことにした。


ここのところずっと車に乗っての移動ばかりだ。
そんな状況に自分でも不安になってくる。
自転車で走っていない罪悪感から、気分が落ち込んでしまっているようだ。

なんとなく、この旅行の終焉を感じてしまう。


軽トラのおじさんはアントファガスタで技術者として派遣中だったが、なにかがぶつかり歯を折ってしまったために La Serena ラ・セレナの自宅へと一時的に帰り、歯医者に行ってからまた急いで戻ってくるのだと言う。

平気な風をしていたが、けっこう深刻なんじゃないか。





車中、以前入った砂漠のなかのレストランで教えてもらった Pan de Azucar パン・デ・アスカル国立公園に行きたかったと話すと、途中で通ってあげると言ってくれた。


砂でおおわれた山のなかを抜け、道を右に曲がる。
そこがパン・デ・アスカルらしい。
あまり変わり映えのしない景色だが、気持ち植物がふえたみたいだ。

様々な動物がそこに生きてきて、ペンギンが住まう島もあるのだと語ってくれる。
見てみたかったが、船に乗らないと渡れないためさすがに無理だった。


    ↑ペンギンが住む島



    ↑白い砂浜がつづいている


自転車で来ていたら行けていたかもしれない

と悔しく思うと同時に、

今のモチベーションではたとえここに一人で来たとしても島へ渡る気にはなら
なかったかもしれない
とも考えた。

さっきも言ったように自転車で走れていないこと、メールで連絡が来る実家でのこと、金銭問題など、
様々な不安要素やその他いろいろが積み重なっていて、この旅行に集中できていなかった。



その先のチャラニャルという町に着いて、ガソリンを補充。

そこはすこし前に巨大な津波があり、大きなダメージを受けたのだそうだ。
今でもその傷跡が残されている。


    ↑被害を受けた家はまだ直っていないところもある


すこし眠ってしまい、気がつくとそこはカルデラという海の町の手前だった。

「ここからコピアポ方面とは違う道を通るから、ここで降りるといいよ。それともラ・セレナまで行くかい? コピアポは鉱山の町だから見るものがないし物価も高いよ」


 ↑地図


ちょっと考えたが、ラ・セレナまで送ってもらうことにした。

この町も明るくて楽しそうなので立ち寄ってみたい気にはなったが、せっかくだからできるだけ遠くまで行こうと思った。
楽をしようと考えたのだ。


    ↑少し観光地化されているらしい海水浴場







海側の道がきれいだから、と一般道から外れて起伏の激しい道を走る。

池が広がっていて、そこだけ植物が生き生きと伸びていた。
たとえば日本でこの景色があってもいたって普通の光景なのだが、
砂漠のなかにこれだけ鮮やかな緑が息づいているのは、珍しいものだった。

自転車で来ていればこの道は絶対に通らなかっただろう。



    ↑奥は砂漠になっているのがわかるだろうか


    ↑水鳥の姿も


その道の付近は先住民が住む場所だということだった。
自然のなかにひっそりと住んでいる人もいれば、村を作っている人もいる。

その村のひとつがここ、トトラルというところらしい。



通り抜けに歩いていた男性に挨拶をする。
ヒゲはたしかに先住民的な雰囲気だが、そのほかは普通だ。
もちろん洋服もちゃんと着ていた。



途中寝袋を落っことすというハプニングもありながら、
外は真っ暗になり、ラ・セレナにつく前にハイウェイにあるレストランへ。

ここは値段が安めなのだそうだ。
店員に値段を聞くと、彼が払ってくれるから大丈夫と言い、これでいいよねと素早く注文してしまった。

なにもしていないのにそこまでしてもらって申し訳ないなと感じるが、断ると向こうも恰好がつかないのでありがたくいただく。




    ↑彼が食べていたツナと玉ねぎを少しもらった。これを頼んだのは歯が痛かったからなのか節約のためなのかはわからない


    ↑自分が食べた肉とスパゲッティ



ラ・セレナに入って彼の家へ行き、そこから安いホテルまで探してくれた。
時刻は深夜1時前。

ネットがどこもイマイチで自分がどこにしようか考えていると、
早く帰りたかったのだろう、ホテル代も払って行ってしまった。


    ↑泊まったホテル


そこまでしてもらうつもりはなかったのでビックリした。
チリ人はそんなに儲かっているのだろうか。

お別れも言えずあっという間に去ってしまった。


彼には悪いことをしたが、ここでそんなことを思っていたらせっかくの好意がマイナスになるような気がして、ただただ感謝することにした。

疲れていて考えるのを放棄したとも言える。

ただ、彼が幸せになればいいと思って、その日はゆっくりと眠った。



以下、拍手コメント返しです。



sさんへ

長い間お付き合いいただいて本当にありがとうございました。
なんだかふがいない終わり方になってしまいました。すみません。

日本に帰ってからも色々と挑戦してみる予定ですし、いつかまた南米に来て行けなかったところをまわってみようと思っています。
ブログやSNSでも書くかもしれません。

sさんもお体に気をつけていい年末年始をお過ごしください。
そして機会があればまたよろしくお願いします。


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