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トラック運転手の心意気 La Negra


この日は、すべてが遅れていってしまう日だった。


・アントファガスタ滞在中に一度ホテルを変えたのだけど、そこの鍵を返すときにホテルのオーナーたちと話をしていたら数十分すぎてしまう。

・町を出る前にもうひと稼ぎとオカリナを吹いてバスキング(路上パフォーマンス)していたら1時間過ぎてしまう。

・ずっと見つけられなかったインフォメーションセンターをこの日に見つけ、チリの地図とこのあたりの地域の地図、今さらながら町の地図をもらい、話を聞いていると時間がすぎてしまう。

ちなみに、地図には海沿いの道があることが判明。
少ないながら人もいるそうだし道もそこまでひどくないらしい。
急きょそちらのルートに進もうか迷う。


そんなこんなで出発が午後3時をこえてしまったのだった。


    ↑バスキングはこんな感じで帽子を置いて吹いていた


海沿いに自転車用の道がつづいていたのでそれをたどっていくと、
途中で切れて道がわからなくなった。

工事のおじさんたちに道を聞き、まがり道を間違えてさらに時間をロス。

市街地で行ったり来たりを繰り返し、ようやく本道へ入った。



    ↑海沿いの道


    ↑このような自転車道がある


    ↑遺跡のようなところもあったが、見に行く時間はない



その先はひたすら砂漠の山道で、ここで特筆することは何もない。



あえて言うなら、
チリに入ってから今でもずっと、車乗りの多くがこちらにクラクションを鳴らし手をふってくれることだろうか。

これまでにも挨拶してくれる車が多い地域は多数あったが、それは狭い範囲内のことであり、特定の場所をすぎると減る傾向にあった。
ここまで広域で手をふってくれる車がいるところは結構珍しいのではないだろうか。

それはもしかしたら、トラックが多いからなのかもしれない。
そういう気を使ってくれる人は、トラックの運転手が多かったからだ。



    ↑走っている最中に見た看板。ゲームのコマンドのような矢印が書かれているが、ばくれつけんでも出すのだろうか。おもしろいデザインである



暗くなってきたころに La Negra ラ・ネグラというところに到着。
「黒」という名のその場所には工場が立ち並んでいた。

道路を走るたくさんの大型トラックが忙しそうに通りすぎてゆく。


店やガソリンスタンドが並ぶところがあり、そのうちのひとつ、簡素な食堂へ。

立ち食いソバ屋みたいなそこでほかの客が食べていたものの値段や物の名前を質問する。
店員は忙しそうでこちらに見向きもしないので客たちへ聞いた。
彼らは自分のかわりにその「豚の炭焼き」を注文してくれた。


するとその客たち、彼らはトラックドライバーなのだが、「これで食え」とこちらにお金を渡してくれたのだった。

結局3000ペソ(480円)全部払ってくれたその豚肉のおいしいことおいしいこと。

だってずっとホットドッグばかり食べていたから。
栄養がかなり偏っていたのだろう。
力がみなぎるようだった。





店を出て、大きな道路の中央分離帯に建つ派出所で、今度は警察官と会話。

「泊まる場所はないからガソリンスタンドで泊ったらいい」とのこと。
トイレも食べるものもあるから、と。

まあ、最初からそのつもりだったんだけどね。


copac という大きなガソリンスタンドでテントを張っていいか尋ねると、端っこだったら OK だと言われる。

そこを見てみると、隙間のあいたマンホールがあった。
ペルーでは、そこからゴキブリが大量に出てきたのを思い出した。
というか、すでにもう数匹見えている。



そのガソリンスタンドはやめて、最初に目をつけていたもっと小さなガソリンスタンドへ行き、テントを張る許可をもらった。

申し訳ないことにほとんど何を言っているのかわからなかったが、どうやら
「ここは電気があまりなくて危険だからこっちのほうがいいのではないか」
と色々提案してくれたらしい。

車が来ないよう三角コーンも、気づかないうちに置いてくれていた。



犬が飼われていてこちらのことを警戒していたが、テントを張るとここに居座ることがわかったのか落ち着いたようだ。


まわりは工場の稼働音とトラックの音の大合唱。
それは朝までつづいていたのだった。


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