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砂漠のなかのレストラン


この日はあまり眠れず、トラックの騒音で体を起こした。

朝の7時過ぎ。
外はまだ肌寒くて薄明るく、曇り空が広がっていた。


テントをたたんで近くの食堂を見て回ったがどこも高かったので、泊まらせてくれたお礼としてガソリンスタンドで小さなパンとコーヒーを購入し、それを朝食にした。



トラック運転手のために用意されたこの食堂通り、そのすみっこの店で目玉焼きと巨大なパンを食べている男性を発見。

人が入っているということは、つまりここなら安いのではないか。
そんな淡い期待をこめて訪ねてみた。

正直まだお腹がへっていたのだ。


しかし返事はほかと同じような値段で、卵3つの目玉焼きとパンだけで2500ペソ(400円)。
高すぎる。

あきらめて先に進もうと思った矢先、そのおじさんが
「いくら足りないんだ」
と声をかけてきた。


返答に困っていると、彼が同じものを注文して、
「俺が払っといたから払わなくていいよ」

昨日といい今日といいおごってもらえて助かるけど、なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

もちろん嬉しかったしありがたい。
でも自分が彼らに対してなにもできない無力感もすこし感じてしまう。


お礼を言って軽く話をしながら食事。
顔よりも大きなパンにかじりつく。



チリのパンはもちもちしていてとてもおいしい。
が、ここは乾燥した大地。
水分を吸収するパンはのどを通らず、食べるのが大変だった。




日焼け止めクリームを塗ったあとに出発。
工場を抜けるとすぐに交差点についた。


昨日地図をもらったときに、海に抜ける道が通じているのを知り、砂漠のなかを抜けずに海沿いへまわろうか迷っていた。

人もいるみたいだし、水や食料に困ることはないだろう。



 
    ↑青い線のところに道があるようだ


ということで、その道を右に曲がったのだが、ちょっと気になることが。
インフォメーションセンターで見たポスターだ。

それは Mano del desierto(マノ・デル・デシエルト、砂漠の手という意味)という写真だった。
google map でも同じ名前を目にしていた。


この交差点がこんなに近かったということは、その観光スポットへもすぐにたどり着けるのではないか。
それなら行ってみようではないか。
たしかその手前にレストランもあったはずだ。

そんなわけで道を戻り、大きな道路にふただび降り立った。


これが大正解。
実はこの交差点はアントファガスタへ戻る道であり、間違えだったのだ。


    ↑間違えそうになった道



そのまま真っすぐに進むが、予想とは裏腹にまったく辿りつかない例の観光スポット。

それはそうだ。
だって地図を読み間違えているもの。



ひたすら走り続けて本当のT字路に入り、ここで先ほどの間違いに気づく。


    ↑これが本物の分かれ道だった


もう時間も遅いし、このままレストランを目指したほうがいいだろう。
それほど遠くはないはずだ。
すでに閉鎖されているかもしれないが。



夕方にそのレストランに到着できた。

ドアが閉まっていたのでやっていないのかと思ったが、人がいるような物音がする。
開けて入ってみると、ちゃんと営業しているようだ。

さすがに無人の砂漠とあって値段は高めだったが、それでもここで補給できるのはありがたい。
食事をして飲み物を買う。




店のおばさんに話を聞くと、自転車ではここからマノ・デル・デシエルトまでは1時間くらいかかるそうだ。

今日行こうか考えたが、疲れたし寝不足だったので、明日見にいくことにしよう。


テントを張っていいか聞いてみると、しばらく待っててと言われた。
1時間後ほど待つとそこの主人がやって来て、
「15匹ほど飼っている犬が暴れるかもしれないから、中で泊っていきなさい」
と部屋を貸してくれた。

しかも無料で。



壁に囲まれた中庭状になっている場所では小犬を守る母犬が日陰で横になっている。

水道があり、壁には扉が6つほど見える。
そのひとつが使ってもいいと言われた部屋で、ベッドが2つ入っていた。
シャワーやトイレも自由に使っていいと言ってくれた。




さっそくシャワーを浴びてひと眠りし、起きると夜の10時。
2時間ほど本を読んでから再度眠った。

よほど疲れているようで、すぐに寝入ってしまった。

 


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