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さっそくチリの洗礼とやさしさを受ける Ollague


ウユニのホテルは心地よく、朝起きたら10時。
バスの出発時刻、午後1時まで時間がない!


外に出て、まずは現在のボリビアーノをチリペソへと両替。
レートは1.1(220ボリビアーノで20000ペソ)。
いいのか悪いのかわからないが、そんなこと言ってられない。

それから昼食を食べて、バスのチケット買って、それから余った小銭をお菓子に変える。


急ぐんだ!

どりゃああああ。







12時半にバス会社に到着。

まだ時間があったので、もしかしたら塩湖を見れるかもしれないと街はずれへ自転車を向けてみるが、さすがに無理だった。

それより乗り遅れたらことだ。

その先は確実なオーバーステイが待っている。
滞在可能日は今日まで。





自転車を押し込み、バスが出発して1時間が経過。

運転手は不審な動きでギアレバーを操作し、バスが止まった。
そして床をあける運転手。




そうやら故障したらしい。

どうやっても直らないらしく、別のバスが来るのを待つことになった。


1時間後にバスは到着し、荷物もろとも乗り換える。
みんな急いでいるせいで自転車を勝手にさわり乱暴に扱われるのにイライラ。


もうバスなんて乗りたくない!!




その後は順調に走行するバス。
ほかの乗客にせかされ時間に追われているせいか、運転が荒い。



ウユニを出てから道が格段に悪くなった。
村もほとんどない。

これを自転車で走るにはかなり骨が折れたことだろう。
時間もかかったに違いない。

その点はバスでよかったと思う。



でもこんなにきれいな景色が待っているのだったら、やっぱり走ってみたかった。



そんなことを考えている間に、





国境に到着した。

バスを降りて自転車や荷物をおろす。
バスは行ってしまった。


ちいさな小屋には審査官の男性が2人座っていた。

特に厳しいわけでもなく、少しの質問が終わってすぐに通してくれた。
チリの入国審査はもう5kmほど先にあるらしい。


    ↑小さいけど奥に見えるのがボリビアのイミグレーション


時刻は夕方。
風がものすごく強く、なかなか進めない。
光と砂ぼこりで前が見えにくかった。




反対側から徒歩旅行者が来た。
こんな時間に通って大丈夫なのだろうか。
この先町はしばらくないのだけど。




暗くなってきたころにチリ国境に入る。



そこは Ollague(オジャグエ)という村とくっついていた。





まずは警察の審査から。

活発な男性が明るく指示してくれ、すぐに終了。
質問などはなく、ふつうに世間話をして終わった。


そこから英語を話せる女性の指示に従って、となりの建物へ。
そこはカスタマーセンターと呼ばれていて、どうやら自転車と荷物のチェックをうけなくてはいけないらしい。


先ほどの女性と別の男性スタッフがやってきた。
日本人だとわかると、大声で
「おはよう!」
と男性スタッフ。

「あ、おはよう。でも今はこんばんはだね、今はもう夜だから」
と静かなトーンで華麗にスルー。

自転車の荷物をほどきながら、男性スタッフが自転車のメーカーなどをチェックしている。


自転車入国の書類を作ってくれ、
「これは出国時に提出しなくてはいけないから失くさないようにね」
とはきはきとした声で教えてくれた。


女性スタッフに泊まる場所はあるか聞いてみる。

「2つくらいあると思うわ。もし見つからなかったらここへきて。多分助けることができると思う」



村を見て回ると、ひとつは閉まっていて、もう一つはべらぼうに高く現在の所持金では泊まることができなかった。

ちょうど走ってきた軽トラのおじさんに相談してみるがどうにもならず、
「もしキャンプするならここは明け方0度を下回るから気をつけてね。風も強いし」
と忠告を受けた。

すでに時刻は8時をまわっており、イミグレーションは閉まってしまった。


商店のよこにタープが張ってあったので、そこにキャンプする許可をもらって今日は野宿。

テントの入口のチャックが壊れているので寒さが心配だが、なんとかなるだろう。


    ↑閉まらない入口


チリに入ってみんな優しく、チリの印象は抜群にいい。

ただ、この村の物価が異様に高いのが気になる。
飲み物なんか、日本より高い。


もしチリ全土がこのくらい高いのだったらどうしよう。
生きていけないかもしれない。


この村だけが、山小屋価格みたいに高くなっているだけだということを祈って、夕食はとらずに眠った。


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塩湖を見ないウユニ Uyuni


ホテルを出て昨日下見に行ったバスターミナルへ行くが、

なんと乗車拒否!


というのも、自転車を載せられるスペースがないのだそうだ。
ほかの車には、うえに荷物を載せる鉄の棒が装着されているのが、ウユニ行きのバンにはそれがないのだという。

するとスタッフのお姉さんが
「新しいバスターミナルなら載せられるし値段ももっと安いわよ」
と教えてくれた。


人に道を聞きながら、その新バスターミナルへ。



ちょうどすぐに出るバスがあり、値段は30ボリビアーノ(480円)と昨日聞いた値段の半分だった。

早速乗り込み、バスが発車。




「あーここはこの前見た橋のところだ、あーここは昨日見た……」


そんな風景を見ながら寝たり起きたりを繰りかえした。
そこでふと気がつく一抹(いちまつ)の不安。


もしかして、滞在期間の日数って入国当日も入ってる?


もしそうだとすれば、明日ボリビアを出なくてはいけない。

この前
「8月は31日があるから考えていた日より一日早く出なくてはいけないな」
と気がついたばっかりなのに……!


すこし余裕があると思っていたが、実は切羽詰まっていたのだった。

これではウユニ塩湖は見れないかな。



寝て起きてを繰り返したせいかそれともバス酔いなのか、頭が痛い。

ウユニの町に到着したときは夕方をすぎていた。
適当にご飯を食べて適当なホテルを見つける。




明日は時間がないかもしれないので、簡単に町を歩いてみる。

思っていたよりも大きく、とくに道路の広さが印象的だった。
ただ夜のせいかガランとしていて、スカスカな感じに見えてしまう。




↓こちらは翌日撮った町の写真






国境行きのバス会社を見つけて明日の時間を聞き出す。
昼の1時に発車するらしい。

これを逃せばほぼ確実にオーバーステイすることになるだろう。
絶対に遅刻はできない。


それにしても、この町もけっこう楽しそうだ。

ああ、もっと早く着いていれば。
心中にうず巻く後悔は大きくなるばかりだが、それはすでにどうしようもできないのだった。


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自転車修復不可能、オルロへと逆戻りしました


久しぶりに起動したガラケーのアラームのおかげで早起きができた。
なかなか気分がいい。




宿を出て、外で売っていた手作りカップケーキとプリンの朝食は2ボリビアーノ(32円)。
間食用にカップケーキをもう2つ買って自転車のかばんに入れておいた。


意気揚々と村を出て、砂漠の道を走る。
今日はいっぱい走ろう。




看板を見ながら、

今日はポオポというところに行ってみようか、時間に余裕があるのならもう少し進んでみようか、

などと考えながら進んでいく。




右よこの景色がまっ白になり、そしてまた普通に戻ったころ、
自転車が妙にガタガタし始めた。

これは、
パンクだ。



あーあ、タイムロスだ。
荷物を置いてタイヤを外し、修理する。

チューブをしまったタイヤを自転車にはめ込もうとするが、うまくいかない。
ギアの変速機が変な形になっていて、チェーンがこんがらがっていた。

自転車に詳しくない自分はなんとか直そうとその部分をいじってみると、どうやら部品がはずれてなくなっているようだった。

どうやっても直らない。
これ以上やってもらちが明かないだろう。
あきらめてオルロの町に帰ることにした。




来た道を5時間かけて歩きマチャカマルカまで帰る。
そこからコンビ(乗り合いバス)に乗せてもらってオルロへ。

ホテルはもっと安いところを探そうとも思ったが、面倒だったし時間も遅くなってきていたので前回と同じ場所に泊まった。



    ↑hotel villa fuerte「強い村」という変な名前のホテルへもどってきた


    ↑この矢印のところ


一日中歩き続けて、足の裏の皮がめくれてしまっている。

疲れ切っていたのでこの日はそのまま休み、翌日自転車を修理・交換してくれる店を探しに行くことにした。



翌日。

色んな店がごちゃごちゃと混ざっている市場に入って探してみる。
ここには昨日出発時に迷って入り込んでしまっていたので、なんとなくその存在と位置は知っていた。


鍵屋がかたまったところがあったので、そこを適当に曲がってみると、一軒あった。
ちいさな自転車修理屋。

話を聞いてみると、修理可能だと言う。
しかしなんだか胡散臭そうな男だ。




一応ほかも当たってみることにした。

奥に自転車の部品を売っている店が並んでいるところがあったので訪ねてみるが、どこも変速機は触れないと言うではないか。

そもそも、その代替パーツ自体置いてないのだそうだ。



もっと探せば修理ができるところもあるのだろうが、あまり時間もかけられないため、最初に見つけた店に頼むことに。



後輪のタイヤとチューブも替えてもらおうと思っていたが、予想以上に高かったのでやめやめ。
故障部分の交換だけを頼んだ。


これが、のちに響くことになることとは。



    ↑新しいのに交換してもらった


ホテルへと帰り、自力でパンクの修理をする。

チューブが穴だらけだったため、新しいチューブと入れ替えておいた。



もう出国日まで時間がないので、明日はバスを使うしかないだろう。

一応近くにあったバス停で、コンビの値段をチェックしておく。
走行時間は約4時間で、60ボリビアーノ(960円)もするらしい。
自転車も載せればもっとするかもしれない。


バスってこんなにするんだなぁ。


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犬とネコの部屋 Machacamarca




この日、起きたら11時すぎだった。

今日こそは出発しないといよいよマズい!
もう一泊したいのをこらえて、Oruroを発つことにした。


準備を整え、1時ちょっと手前。
道を間違えつつも事前に調べていた道をたどり、この都市を脱出した。


    ↑妙に上手いイラストが描かれている橋のしたを通る



    ↑昼食にエンパナーダ(パン生地やパイ生地に具を入れて焼く中南米の軽食)。中身は甘めの餡が入っていた



    ↑文字の多い看板。しかしこれによっていつも迷わずにすんでいるのである



そこからはいつものように荒野、というかもう砂漠に変わっていた。
気温も高く、そして何もない。

今まで走ってきた、標高が高く寒いところよりも温かいところの方が人が少ないというのも不思議なものだ。


    ↑ソラソラという村があったようだが、どこにあるのかわからないくらい小さなところだ



    ↑西部風でカッコいいバス停



3時間走ってMachacamarca(マチャカマルカ)という村についた。




そこで遅い昼食をとる。




その店の人たちの話では、どうやらここに alojamiento(アロハミエント、簡易宿所)があるらしい。

もうちょっと進んでもいいが、次の村に着くころには夜の8時をこえるかもしれない。
暗くなるとなにも見えなくなるので、今日はここまでにしておこう。


人に聞きながら、アロハミエントを探して村を歩き回る。


    ↑線路。この村は鉄道を売りにしているらしい





やっと見つけたその宿には、ネコと犬2匹が飼われていた。
入口のとびらをあけると、彼らが出迎えてくれる。








おじいさんがひとりでここに住んで、ついでに泊まる場所を貸してあげているようだった。


値段は35ボリビアーノ(560円)。
シャワーはない。

値下げをお願いしたがダメだったので、その値段で泊ることにしたら、お釣りがなかったのか30ボリビアーノ(480円)に下げてくれた。

でも広いしけっこうおもしろい作りだったので、これならふつうにそのまま35ボリビアーノ払っても良かったかもしれない。





    ↑カーテンはないが、ベッドのすぐわきに大きな窓がある



    ↑部屋は2階で、扉をぬけるとちょっとした談話室のようになっている


犬やネコと遊んで、それから村のなかを少し歩き回ってみる。

夕食は見つからなかったので、今日は抜くことにしよう。
村に入った時におばちゃんからもらったバナナとみかんもあるので、なんとかなるだろう。


    ↑広場で「ちょっと待ってなさい」と言われて受け取ったバナナとみかん











    ↑このネコいつもカメラ目線なんですが↓↓







    ↑市場で売っていたサナオリア=にんじんのジュース。「水は入れてない100%絞ったやつだよ。目にもいいし」ということで飲んでみたが、全然臭みがなくておいしかった



夜。

明日はちゃんと起きられるようにずっと封印していたガラケーを起こしてみる。
線をつなげておかないとバッテリーが切れてしまうが、ちゃんと動くようだ。

ということで充電をしていると、部屋にネコや犬が何度となく入ってきてしまう。


    ↑なにかを訴えかけるネコ


    ↑なでてほしい犬



    ↑我が物顔のネコ


それぞれ何度か入っては出ていき、偶然2匹同時に入ってきたときに彼らが暴れまわって、ごわごわのネコの腹毛に充電コードが絡まってしまった。

叱りながら取ってあげると、そのまま逃げて下へ。


その後歯を磨きに行くと、2匹が恐る恐る近づいてきた。
特にネコはこちらに謝りたかったようで、目の前をシュンシュンと何度も通り抜けていく。

その行動がとてもかわいかった。
別に携帯やPCには何事もなかったので、怒ってはなかったんだけどね。

もう入って来れないように、ドアのカギを閉めて眠った。


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都会とは、体を休める場所である。Oruro




外の騒がしさで目を覚ました。
時刻は、7時30分。

テントや寝袋をかたづけていると、9時ごろになってしまった。



ビラビラ村を抜けて20kmほどで Caracollo カラコジョに到着。

昼飯を探したがあまりいいところはなく、広場のそばで売っていた鶏肉の料理を頼んだ。
スープなどはつかない一皿料理だが、6ボリビアーノ(96円)と格安だった。


ついでにちょっと気になった batido バティードと呼ばれるものを頼んでみた。

バティードの意味を調べてみると「ミルクセーキ」と出たが、ここで出たのは卵のポンチェ(メレンゲ)に炭酸ジュースをくわえただけのものだ。



写真は1ボリビアーノ(16円)で、ペプシが入っている。
もっと高いのだとマルタというもっと高い黒糖の味がする炭酸に練乳も入れてくれるようだった。

味はまあまあ。
マズくはないが、なんだか物足りない感じがするデザートだった。



町を出て、そのあとは道をひたすら真っすぐ。

周りはひらけた景色だった。
見た目がなんだか地元の道路に似ていて、すこし懐かしくなった。


 
    ↑この辺は村をすぎるたびにこのUターン看板があり、ものすごく後ろ髪をひかれるのだ!




    ↑アルパカのお散歩↓





    ↑前にも出てきたが、これは塩なのだろうか?



2時ごろに Oruro オルロという町に入った。

これがかなり都会!!
ビックリ。

大きな建物がたくさん建っていて、おしゃれなカフェやケーキ屋もたくさん並んでいる。


    ↑入ってすぐに現れた謎のオブジェ



    ↑町は広く、アイスを食べて休憩。この Vaquita バキータのチョコ味がめっちゃうまい


道がわからないのでとにかくずっとまっすぐ進んでみるが、ホテルらしきところが全然見当たらない。

「中心部はまだ先だ」
と教えてくれたおばちゃんに飲み物までごちそうしてもらいながら進むが、やっぱりない。

花が売られている緑あふれた公園のそばにやっと見つけて値段を聞いてみると、90ボリビアーノ(1440円)と高かった。
話を聞くと、ホテルがならんでいるのはもっと向こうの道路沿いだったらしい。


    ↑ここがホテルの並ぶ 8月6日通り


そちらへ移動し、個室トイレは80ボリビアーノ(1280円)、トイレ別だと50ボリビアーノ(800円)のホテルを見つけて入った。

もう疲れたので、そこに決定。
もちろん50ボリビアーノの部屋だ。

ネットはすごく弱いのであまり作業できなかったが、まったくないよりはマシ。
用意しておいたブログを修正し、予約投稿をいくつかしておいた。


ここではあまり動き回らず、体を休めるために安静にしておこう。


    ↑こんなおもしろそうな高台もあるが、行かないぞ!


それでもちょっとだけ、ちょっとだけ見てみよう。
せっかくの大きな町だしね。


    ↑ゼリーの乗ったカップケーキ。けっこうデカいのに3ボリビアーノ(48円)とお買い得だった



    ↑シャム猫が店番中



  ↑マックを修理できる店も何件かあった



    ↑オシャレな小さいカフェ


    ↑フラペチーノは13ボリビアーノ(208円)



    ↑こちらは緑の公園のまえにあるカフェ


    ↑フラペチーノは大サイズしか用意されてなく、18ボリビアーノ(288円)と高い。氷の感触が残っており、クリームも甘さ控えめでおいしかった。ただし、カプチーノは高いわりに安っぽいので注意



    ↑昼食にオレンジソースのチキンを。めちゃうま



    ↑なぜ、水道なんだ……



    ↑ゲームセンターもいくつか並んでいた。ここでは、他のところで人気だったダンスダンスレボリューション系ゲームには人はいなかった



次の日に出発するか迷ったが、脚が筋肉痛だったのでもう一泊することにした。
ブログを書いたりして過ごす。

次の日に出発だ!
と思ったが、起きたのが昼の1時前……



いや違うんだって!

朝9時前に目が覚めて、着替えたり荷物を詰めたりしてたらそれが実は夢だった
っていう罠がね、しかれていたんです。



もう時間はないが、もう一泊しよう。

これはウユニに着いてからバスを使うしかないかもしれない。
いや、急げばまだギリギリ間に合うか。


この日はゲームをしたり、ライティングの作業をしたり、フラペチーノを飲み比べたり、おかげさまでかなり充実した日になった。


正直、この町は好きだ。

ラパスでは
ここは便利だけど住むのは嫌だな
と思っていた。

でも、ここにだったら住んでみたい。


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1日めいっぱい走るということは Vila vila




いいベッドでゆっくり休めるというのは罪なもので、この日も11時すぎに起きてしまった。
完全に寝坊だ。

正直に白状すると、本当は朝6時ごろに目が覚めたのだが、2度寝してしまったのだ。


昨日洗った洗濯物が全然乾いていないので自転車にしばりつけ、鍵を置いてホテルを出た。

町の食堂で朝食、もしくは昼食をすませて、今日も荒野へ。





おそらくここから国境までの距離は600kmほどだろう。
滞在できる日数は残り10日。

つまり、1日60km走れば間に合う計算になる。

ただし、それだと毎日走りっぱなしで休みの日がなくなり、さらにゆっくり観光はできなくなる。

だから、できれば1日70kmは走っておきたいところだ。



とにかく自転車をこぎつづけ、すこしでも前へ。

いつもなら降りて歩く坂も、今日は立ちこぎで頑張る。
無理な力をいれているせいでギアが定期的に大きな音をたてて外れるが、そんなの気にしない。

急がなくては。



まわりの写真を撮っている余裕もなく、村を見てまわる時間もない。

カメラには、次の村までの距離が書かれている看板と、距離の書かれた距離標のみの写真がおさめられた。
走った時速を計算するためである。


    ↑Estaban Arce「エスタバンアルセ」というのもカッコいい名前の村だなぁ
 


    ↑けっこう大きな村もあるがスルーしなければいけないのが寂しい



    ↑ボリビアには歩道橋がたくさんあるのだが、これは崩れたのだろうか。柱が倒れていた



Konani コナニというゲーム会社のような名前の町に入った。
町といっても数ブロックしかないところなのだが、泊まるところやレストランがいくつか見られる。

もし時間があれば、この日はここで泊ることだろう。

しかし今日は違う。
まだ50km少々しか走っていないのだ。
時刻もまだ3時半。
もっと進まなくてはならない。

簡単な食事をして先へすすんだ。



これは道中で見つけた川のあとだが、白いのは塩だろうか。



もしそうならウユニ塩湖も近いのだなと感じさせられる。

しかしなぜ塩が出るのだろう?
不思議だ。



そろそろ体力が尽きてきて、のぼりの坂がきつい。
脚と肩が痛み出した。
スピードが一気に落ちる。

「つぎの村まであと10km」
と書かれた看板を見るたびに

今日はそこで終わろう!

と思うのだが、そこに着いてしまうともうちょっと行けそうな気がして通り過ぎる、
を数回繰り返す。



あたりはすでに暗くなってきた。
幸運にも途中からくだり坂も増えて体力はすこし回復したが、そろそろ限界みたいだ。


今日はここ



Vila Vila ビラビラという変な名前の村で休むことにする。


あと2時間早く出ていれば、もっと大きな Caracollo カラコジョという町に着くことができたのに。
悔しい気持ちでいっぱいだったが、今考えていてもしょうがない。


料金所(ここは一応ハイウェイなのだ)にくっついたその村はとても小さく、食堂なんてものはない。

犬がたくさん走っていて、"喧嘩による叫び"と"仲裁による吠え"を繰り返していた。


店は2つあるが、置いてある商品は少なかった。

どちらも行ってみたが、片方は人の話を聞かない人で、もう片方は耳が聞こえなくて話が通じなかったので何も買わずに出ていった。



そういえばボリビアに入ってから、また言葉が聞き取れなくなった。

かなりの訛りがあり、単語と単語を繋げてササっとしゃべってしまうので、全然聞き取れないのだ。
さらに聞きなれない言葉も使うので、全然わからない。

せっかくペルーの早口もなんとかなってきたところなのに、これでまたふりだしに戻った。

チリは聞き取りやすい発音であることを願うばかりだ。





村の奥にある少年たちがサッカーをしている広場か、それとも村の広場か、どっちで寝ようか考える。
サッカーを見ている兄弟に、ここではヘビなどは出ないし安全だと言われた。

コンクリートよりも土のほうがやわらかく寝心地はいい。
ただ、広場には屋根と柵がついているところがあり、そこならば夜露にも犬にも守られることだろう。

広場にテントを張ることにした。



今日たくさん走ってとても疲れた。
それでわかったことは、ただただ走るだけというのはつまらないということだ。

ゆっくり色々な村や町を見て、その大地を堪能して、そうやって進んでいきたい。
そうでなければ、なんだか意味がないような気がする。
やっぱり自分にはのんびりと旅行するのがいいのだということを再確認した。



テントの入口はずいぶん前から壊れていて閉まらなく、そこから入ってくる空気が冷たい。
できるだけ暖まるように縮こまって寝袋にもぐりこんだ。


テントの中で本を何冊か読みながら、日本に帰ったらどうやってまた資金を稼ぐかという議題がなんとなく頭をよぎり、疲れた頭脳が自動的に構想を練り出して読書の邪魔をしてくる。

合計150ページか200ページほど読んだところで0時を過ぎていることに気づき寝ようとした。

だけど、なんだか眠れなかった。


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テーブルに置いてある油はサラダにかけるようです。Patacamaya




翌日、11時に起きてしまった。
もっと早く起きて出るつもりだったのに。


仕度をして、なぜか2人いる神父さんの母親たちに彼の居どころを聞くが、
「ここにゃいないよ」
と怒ったように言うので、お金を部屋のなかに置いておいてそのまま出てきた。

彼女らに盗られないか心配だ。



村の外でチャリダーに会ったが話す気にもなれず、こちらは疲れた顔でほとんどイエス・ノー返答をしていると、さっさと彼は行ってしまった。
悪いことをしてしまったかもしれないが、ラパスのカサ・デ・シクリスタがいまだに尾を引いているようだ。

だれにも顔を合わせたくないし、だれとも話したくない。

ドラえもんの独裁者スイッチがあれば自分は幸福に暮らせるのになぁ
とか考えながら道を走る。





その先 Tholar ソラールという村には大きなホテルが2つあった。
どう見ても高そうだ。



    ↑町の入口。traveler のスペルが間違ってるのはヒミツにしとこう




    ↑ホテル↓



こんなヘンピなところだから、ネットもないかもしれない。
せっかくのホテルだが、きっと昨日はここに泊まらなくて正解だったんだろう。
そして今日もここに泊まることはない。

昼食だけ食べて、そのまま出ていった。





このあたりからは村も少なくなってきて、ただただ荒野を走り続けるのみ。
正直、たいくつだ。



それにしても、地図で見るともっと近いイメージだったのだが、なかなか目的の町に着かない。
これはもしかしたら予測を外したのではないか。
出国期日まであと10日ほどしかない。
このままでは間に合わないのではないか。

心配になってきた。
あとで調べてみなくてはならない。



    ↑温泉があるのだろうか

 

途中で荷台にはさんでいた2ℓコーラを落としてしまう。

拾ったついでに飲もうとすると、メントスでも入れたんじゃなかろうかという勢いで噴き出すコーラ。
さすが2ℓである。デカいだけある。

手袋や荷物や服がコーラまみれになってしまったが、のどが渇いたときにのむコーラはうまかった。
ベタベタするのは特に気にせず先へすすむ。




Patacamaya(パタカマヤ)という、少しだけ大きめの町に着いた。



宿もあるようだし、今日はこのくらいでやめておこう。

適当に入ったホテルは、25ボリビアーノ(400円)で広めの部屋とホットシャワー。
これは相当安いのではないか。




    ↑このホテルで飼われていた犬。片足を怪我している

wi-fi はついていないらしく、
「ここを戻って国道沿いになんとかというホテルだったら同じくらいの値段でネットもつながるわよ」
とホテルのお姉さん。

町中にはネット屋がたくさんあるのに。


しかし面倒なので、ここに泊まることにした。
今はネットはいい。
それよりシャワーだ。

ここ4日ほどシャワーを浴びられていなかったし、コーラまみれだし。

広めのバスルームで体をながし、コーラの染みついた服を水につけた。
久しぶりのシャワーでさっぱり。





事前にキャプチャしておいた地図を開き、指で距離を数えてみると、
ウユニまではだいたい400km、
そこから国境までがだいたい200km。

一日60km走ったとして、休憩日なしで10日。

ギリッギリ!!

しかもノンストップで毎日走り続けるのはキツいし、それでは観光もできない。


とりあえずもうちょっと頑張ってみて、ダメそうだったらバスを使って国境まで行くことにしよう。

でもできればバスは使いたくない。
自転車を積み込むとたいていいつもどこかが壊れたりなにかがなくなっていたりするからだ。

無理をするのはよくないが、できるだけ努力してみることにしよう。


ここから、自分のボリビアチャレンジが始まったのである……!



それはおいといて、明日出発なのでパタカマヤを見回ってみる。

端から端まで歩いてもすぐに着けてしまうくらいの町なので、ササっとね。




店に入ってみると、FC のスーパーマリオブラザーズ3をやっていた。

そこでアイスを買う。
昼は日差しが強くてすこし暑いのだ。
夜はめちゃくちゃ寒いけど。



今回も当たり!
このリンゴ味のアイスは1ボリビアーノ(16円)と安いのにおいしい。

まさにアイスキャンディといった感じで固めの棒アイス。

値段通り、
"水と糖と香料を混ぜて凍らせました"
という感じの作りだが、コリコリした歯ごたえと甘いリンゴの味はやみつきになりそうだ。



のどが渇いたので、そこらへんで売っていたリマという果物のジュースを買ってみた。

  

なかなか美味しい。

味は……なんというかうまく言えない。
どこかで味わったものに似ているような気もするのだが、なんだったか思い出せない。
南国のフルーツっぽくもあるし、違うような気もする。

さわやか系の味で飲みやすい。


以前紹介できなかったおいしいお菓子。



doble chir lito ドブレ・チルリトという名前らしい。

外側のコーンにしっかりとうもろこしの味がついていて、チョコもたっぷり入っておいしい。

難点はコーンの粉がポロポロ散らばってしまうところ。


あとこれもおいしかった!



Choco Choco MEGA、チョコチョコ メガ。
中にペーストのチョコが入っていて、極小粒のナッツが入っている。
50センティモ(8円)。

たぶんパンにつけるとおいしいが、量が少ないので1本じゃ足りないと思う。



夕食は10ボリビアーノ(160円)のシルパンチョ。



毎度どこにでもあるこの右上の油はどれに使うのか聞いてみた。
すると、思ってもいない回答が。

なんと、サラダにかけるらしい。



なぜだ。



ボリビアは謎にあふれている。


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神父さんのお仕事に付き添う元気をください Calamarca




そろそろ走り出さないとマズいのではないか。
ということで重い腰を上げ、タイヤに空気を入れる。
ホテルの人にドアを開けてもらって見送ってもらい、出発。

そのすぐ近くにあったエンパナーダ(中に具を入れた大きなコロッケのようなもの)を食べ、エル・アルトを脱出した。



この先はとにかく荒野、ときどき村。
5km ~ 10km 間隔で村が発生する。
出現というよりは、発生のほうが合っている気がする。


    ↑こんな一本道がつづく。ここだけはなぜかゴミ捨て場にされていて、1km ほどゴミの山が脇を占領していた



    ↑荒野


    ↑そして荒野



    ↑シャッターチャンスを逃したが、消えゆく竜巻が見えるだろうか。こういうのがそこら中で発生している


 

ボリビアに入ってからずっとそうなのだが、道路に動物の死体が多すぎる。

ネット環境の悪さとともに、この死体の量もカナダと似ていると思った。
ネコや犬の血や内臓がとび出た体が道路わきに置かれているのでときどきビックリする。




Vilaque(ビラケ)という村の店でパンとアイスを買って食べた。


    ↑ちなみに 16km 先にアホヤという村があるらしい。村人が日本語を学ばないことを祈る

今日はエンパナーダしか食べていないので、お腹が空いていたのだ。
昼食はこれでおしまい。

ああ、なにも食べなくてもいいのならどんなに楽なことか。
いちいち食事に時間もお金もとられないし、トイレにも行かなくていいのに。

なんて考えながら、ここで食べたヨーグルトアイスがとてもおいしかったのでオススメ。






サングラスをかけると、まわりが見えなくなるので行動が大きくなりやすい。
この日も大声で歌の練習をしながら走った。

こういう暇な移動のために、事前に歌詞を検索していたのだった。
青山テルマの garden of love やスエミス&ザスエミツの astaire を歌い、そのせいで無駄に息を切らしながら進んだ。



そして夕方ごろ。



Calamarca(カラマルカ)という村に到着。

地図で見る分にはもっと大きなところかと思っていたがそうでもなく、宿はないらしい。
しかし泊めてくれるところはある、と村人は口々に言う。

その言葉を信じて村の広場へ行ってみると、迎え入れてくれたのはここの神父さんだった。

歌を歌いながら部屋に案内してくれ、トイレや毛布の説明。
いくら払えばいいのか聞いてみると、

「100ボリビアーノ(1600円)」

と冗談なのかよくわからない回答のあと、

「高すぎるなら最小で20ボリビアーノ(320円)でいいよ」


それでもそこそこ取るのね。
いやべつに文句はないけど。



    ↑この部屋を使わせてくれた



    ↑自転車は外でおるすばん


夕食を食べに行くため町を下りていると、大きな軽トラに乗った神父さんが
「ちょっと向こうまで行くから乗っていきなよ。30分くらいで戻るからさ」
と言うので、疲れきった頭ではなにも考えられずそのまま乗車。



村人を乗せたり降ろしたりタクシーの代わりをつとめる神父。
これも仕事のうちなのだろうか。
通りすがりの人たちに、いちいち挨拶をしながら走る。




車に乗って10分程度、先ほどアイスを買ったビラケに入った。

どうやらこの村の教会の様子を見に来たようだ。
電気がつかないから明日直しに来ないといけないらしい。


この日はここビラケでお祭りの真っ最中だった。

「見ていくかい?」

神父さんと一緒に暗くなるまで見学したが、彼には悪いがこちらは疲れているしお腹も減っているし寒いしで早くもどりたい。

お誘いは本当にありがたいんだけど。






    ↑パレードと、それを撮るドローン



ヘトヘトになってカラマルカに戻り、食事をして寝床へと戻った。

2枚ならべて敷いたマットは硬く、ちょうど隙間のところが腰に当たって痛い。



本を読んだせいで、この日は嫌な夢を見た。


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